身ごもり政略結婚

「そんなこと、できるわけがありません」


彼は期待の後継ぎなのに。

エール・ダンジュを辞めることも、須藤家を出ることもあり得ない。


「いや。そんなことは簡単だ。結衣とこの子と生きていけるなら、なんだってできる」


彼の強い言葉に顔を見つめると、熱い視線につかまりそらせなくなる。


「俺、ずっと跡取りをと急かされてうんざりしてた。お見合い写真を持ってこられたり、あからさまに女性を紹介されたり……。会って話してみたこともあったけど、誰も俺のことなんて見てなかった。エール・ダンジュの社長の妻という座が欲しいんだなという人ばかりで、完全に女性不振だった」


彼は唇を噛みしめて続ける。


「でも千歳で結衣に出会って、結衣が和菓子のことを生き生きと語る様子が本当に心地よくて。俺のエール・ダンジュの洋菓子に対する想いと似ているなと。毎月新作が楽しみで、結衣に説明してほしくて通ってた」
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