身ごもり政略結婚

「私……最初は千歳を守りたい一心でした。ただ、結婚したからにはよき妻になって添い遂げたいとも思っていました。ですけど、結婚当初は大雅さんとの間に超えられない壁があると感じていたのも事実です」

「うん」


大雅さんは神妙な面持ちで相槌を打つ。


「だけど、この子を授かって……大雅さんの優しいところを知るたびに〝好き〟という気持ちが湧いてきて。でも、大雅さんに『愛だの恋だのまったく興味がない』と言われていたから、この気持ちはしまっておかなきゃと……」

「それは本当?」


うなずいた瞬間、気がつくと私は彼の腕の中にいた。


「ごめん。結衣に向けて言うべき言葉じゃなかった」
「大雅さん……」


私の背中に回った手に力がこもる。


彼は愛や恋に興味がないのではなく、〝自分を愛してもいないのに、愛していると口にしないでくれ〟という気持ちだったのではないだろうか。

大雅さんがこれまで経験してきたのは、彼自身に向けられたものではない、偽りの愛だったから。
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