身ごもり政略結婚

悩みがすべて解消されたせいか、もう匂いも気にならなくなった。


「元気に産まれておいでよ」


私は検診で耳が聞こえていると聞いてから、何度もお腹に話しかけている。

大雅さんも同じで、会社から帰ってくると私と視線を合わせて「ただいま」と微笑んだあと、かがんでお腹にも「ただいま」と挨拶をするので噴き出してしまう。


「結衣、体調はどうだった?」

「ムカムカもありませんし、ご飯を炊く匂いも平気になってきました。今日は久しぶりに和食です」


ようやくキッチンにも立てるようになり、彼が好きな和食を作った。


「それは楽しみ。着替えてくる」
「はい」


一流のレストランに行くことも多い彼が、私の料理を『楽しみ』と言うのが信じられない。

でも、笑顔を見ているとお世辞を言っているわけでもなさそうだし、素直にうれしく受け取っている。


着替えた彼はリビングにやってきて、テーブルの料理に目を輝かせる。
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