身ごもり政略結婚
「い、いえっ」
こんなに喜んでいる父をがっかりさせたくないと言葉を濁す。
すると彼は少し眉を上げてから話し始めた。
「実は、本日はもうひとつお願いがございます。私、千歳さんに通っているうちに結衣さんに興味を持ちまして、結婚していただけないかと」
はっ!? 今なんて言ったの?
あまりに突然のことで思考が固まり反応できない。
「結衣と?」
代わりに父が漏らした。
「はい。一目惚れでした。ですが、丁寧な接客や、和菓子一つひとつに情熱あふれる説明を付け加えてくださる気遣いを見ているうちに、ますます好意を持ちました」
でも、だからって……。
客と店員以上の会話ひとつしたことがないのに。
「そう、でしたか。結衣、お前はどうなんだ?」
父が少々困惑ぎみに私に尋ねるが、なにをどう言えばいいのかすら思いつかない。
放心状態で黙り込んでいると、須藤さんが口を開く。