身ごもり政略結婚
緊張と突然の求婚に戸惑って料理がなかなか喉を通らなかったけれど、上品な柿のデザートを食べ終わると、須藤さんが父にもう一度頭を下げる。
「よいお返事をいただけることを祈っております。ご検討される間になにか質問などございましたら、私でも麻井でもいつでもご連絡ください」
「ありがたいお話でございます。どうぞよろしくお願いします」
すっかり須藤さんのことを信頼している父は、もうこの話を受ける気満々。
千歳を残してもらえて、今までどおり職人として働けるというのだから当然だ。
「結衣さん、このあとお時間を頂戴してもかまいませんか?」
「は、はい……」
正直なところ、男性と――しかもこんなレベルの高い男性と、会話を弾ませられる自信はまったくない。
けれど、もう少し仕事の話も聞きたいし、さっきの求婚の真意も聞きたい。
「麻井。平岡さんをお送りして」
「かしこまりました」
「本日はありがとうございました」
凛とした声で麻井さんに指示を出した須藤さんは、父にもう一度深々と頭を下げている。