身ごもり政略結婚

「専務の乗ったタクシーが事故渋滞にはまってしまい、こちらまで走って向かうと。でも、ここから二駅先くらいの場所にいるらしくて……」

「二駅?」


麻井さんがまた連絡が入ったと教えてくれたけど、走るって。

しかも二駅って結構あるよ? 
走っても三十分近くはかかる気がする。

痛みはまだ微弱で、大雅さんも十分間に合うのに。


「奥さまは落ち着いていらっしゃるとお伝えしようとしたら電話が切れてしまい、それから連絡がつきません。必死に走っているのかも」

「嘘……」


また普通に話せるし、陣痛室にも移ってないのに。


「こんな取り乱した専務を見たことがありません。余程奥さまのことが心配でたまらないんでしょうね」


麻井さんは口元を緩める。

冷静沈着なイメージの大雅さんがなりふり構わず駆けつけてくるって、なんて贅沢な愛され方なのだろう。


「まだ大丈夫そうですね」

「はい。それほど痛いという感じでもありませんし、先は長いです。麻井さん、いつも私的なことで振り回してごめんなさい」
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