身ごもり政略結婚

「麻井さんが伝えようとしたら電話が切れたって……」

「あ……。今、玄関で待ってたけど、話も聞かなかった」

「ふふふ。私はまだまだですから、お礼を言ってきてください」

「うん」


大雅さんは私の額にキスを落としてから、病室を出ていく。
そして十分ほどで戻ってきた。


「麻井に笑われたよ」
「ですよね」
「産まれたらすぐに写真を送れってさ」


ベッドの横にイスを出して座り私の手を握る彼は、指先にキスをする。


「陣痛はまだ?」

「時々張りますけど、本陣痛ではないみたいです。長い夜になるかもしれません。大雅さん、休んでおいてください」

「休めるか!」


予想通りの反応だった。

これから先、わがままを言って困らせるかもしれないから、一応伝えたのに。


結婚当初は遠慮ばかりだったけれど、最近はつらいときはつらいと言えるようになった。
それも、大きな心で全部受け止めてもらえるからだ。
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