身ごもり政略結婚

「ありがとうございます」


今、大勢に押しかけられても大雅さんにわがままを言えないので、来てもらうなら出産後がいい。


「大雅さん、手を握ってください」
「こう?」


彼に触れているだけで安心できる。


「うぅー」


しかし、痛みが来るたびにいちいち唸ってしまい、大雅さんに心配をかけることになり心苦しい。

とはいえ、もうこれは仕方がないと割り切った。
痛いものは痛い。


時々助産師や先生が様子を見に来るが、『陣痛室に行きましょう』とは言われない。

あとどれくらいこの痛みに耐えなければならないのだろう。

そんなことを考えて弱気になったものの、この子に会えるのだからと気持ちを立て直した。



そして、とうとう陣痛が始まってから十七時間経過した。


「まだ産まれそうにないわね」


南雲先生が小さなため息をつきながらつぶやく。
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