身ごもり政略結婚

「随分痛そうなんですけど」

「陣痛の感覚が狭まってはいるので順調に進んでますよ。初めてのお産ですから、焦らずいきましょう」


慣れている先生は余裕があるが、大雅さんの顔は険しい。

「大丈夫だよ」と彼に言い続けていた私も少しずつ疲れが出てきて、あまり話せなくなった。



お産が突然進んだのは、本陣痛が始まってちょうど二十四時間ほど経過した頃。


「あー、痛いー」


陣痛の間隔が短くなり、痛みも強くなってきた。


「結衣、頑張れ」


大雅さんは腰をさすり続けてくれる。
が、お礼を口にする余裕もない。


「あらっ、一気に進んだわね。そろそろ陣痛室に行きましょうか」


と言われたものの、陣痛室はひとつ下の階にある。
異常分娩でない限り、どうやらそこまで歩いていくのが普通らしいができるだろうか。

歩くくらいのほうがお産の進みがいいからなのかもしれないけれど、結構な試練だ。


「陣痛が治まったら行きますよ」
「はい」
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