身ごもり政略結婚

「結衣」


彼はすぐに戻ってきたけれど、視線を合わせる余裕があったのも一瞬。
再び痛みが襲ってきて呼吸が乱れる。


「あー、あーーーっ」


もう叫び声しか出ない。


仰向けに寝ていられなくなり、横を向いて背中を強くさすってもらったり、ときには四つ這いになって耐えた。


何度も助産師がチェックしに来るが、分娩室へとはならない。

こんなに痛いのに、まだ続くの? 
ううん、もっと痛くなる?

それから二時間。
ただ髪を振り乱して歯を食いしばる。


「いー、痛いっ。うーうー」


自分のものとは思えないような唸り声をあげてひたすら耐えるも、いきみたくて仕方ない。


「まだよ。我慢して」


助産師が私をなだめるように励ます。


「結衣。頑張れ!」
「大雅さん、手……手……」


彼に手を握ってほしいと訴えると、すぐ気づいてそうしてくれる。
この手があるだけで気持ちが落ち着く。


「あぁぁっ、もうイヤッ」


しかし、思わず本音がこぼれる。
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