身ごもり政略結婚
「須藤さん、頑張りましょうね」
待機していた南雲先生が、私に酸素のチューブをつけるように指示を出している。
もうこの頃になると呼吸も乱れて、つらさのあまり勝手に涙が流れていた。
するとその涙をタオルで拭ってくれた人がいる。
助産師かと思い痛さのあまり閉じていた目を開けると、大雅さんが今までとは一転、優しく微笑んで立っていた。
「結衣。大丈夫、順調だよ。もうすぐ会える」
実に落ち着いた声で諭されて、私は素直にうなずいていた。
彼がそう言うなら、大丈夫。
どうしてなのかわからないが、そう強く感じた。
「須藤さん、このバーを持ってね。『いきんで』と言うときに全力でお願いね」
それからは夢中だった。
やっぱりつらくて涙が流れてしまったけれど、その度に大雅さんが拭ってくれた。
「長く息を吐いて。そう、上手よ」
助産師が盛んに私を励ます。
ただ息を吐くだけで褒められるなんてこの先もきっとない。
でも、それが自然にできないほどには取り乱していた。