身ごもり政略結婚

そんなに急ぐんだ、と思ったけれど、急ぐのは我が家のほうかも。
来月には店を畳もうとしているのだから。


「承知しました」


どんな返事をしたらいいのかまったくわからない。
でも、必死に考えよう。


「ここのデザートもおいしいですよ。エール・ダンジュの次ですが」


彼が小さな笑みをこぼしながら勧めるので、スプーンを手にしてジェラートを口に入れる。

甘酸っぱいいちごの味が口に広がりもっと味わいたいところだったが、私は結婚のことばかり考えていた。



それから一週間。

麻井さんと営業担当者が、アルカンシエルの企画案と千歳の再建案を持ってきた。

定休日だったが秋色を出してもてなすと、麻井さんが大喜びしている。


「私も好物ですが、須藤がこちらを大変気に入っておりました。アルカンシエルに是非納品したいと」


須藤さんが千歳の和菓子好きというのは本当らしい。
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