身ごもり政略結婚

「あぁっ、本当にありがたい。今まで通りの仕入れができれば、品質を落とすことなく継続できます」


父の弾む声が私の背中を押す。

私が結婚を断れば……千歳はなくなる。
そして父の笑顔も、春川さんの職人としての人生も。


「それでは、こちらで承諾をいただいたと須藤に伝えます。ありがとうございました」


麻井さんは笑顔で私にも頭を下げて帰っていった。



須藤さんからメッセージが届いたのは、その晩のことだった。


【今日は麻井がお世話になりました。再建案も了承いただけてありがたいです。近々、お時間をいただけませんか? 結衣さんの都合に合わせて時間を作ります】


私はそれを読みながら、決意していた。
政略結婚を受け入れると。


「お母さん……」


自分の部屋の窓から見える満月に近い月に母の顔を思い浮かべる。

母が生きていたらなんと言っただろう。
きっと反対しただろうな。


けれど、不幸になると決まったわけではない。
この結婚を後悔しないように努力しよう。
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