身ごもり政略結婚
父に政略結婚の話が漏れるのが嫌で、学生時代からの友人にも相談できなかった。
これまで散々恋バナをしていた一番の親友、田淵真紀(たぶちまき)にも結局ひと言も耳に入れていない。
完全にひとりで決めなくてはならなかったので、正直これで正しいのか自信がない。
でも、昼間の父の笑顔を思い出すと、正しいとか正しくないとかではなく、こうするしかないと覚悟を決めた。
須藤さんに会ったのは、その週末の日曜日。
十五時で店番を春川さんにバトンタッチして、彼に会いに行った。
父に須藤さんと会うという話をしたら、「うまくいってるんだな」とうれしそうで、胸がチクリと痛む。
うまくいっているわけじゃない。断れないだけなのに。
待ち合わせの時間に外で待っていると、彼は自分でクーペタイプの黒いBMWを運転して現れた。
今日もスーツ姿なのは仕事をしていたからだろうか。
「こんにちは」
挨拶をする彼は、私をじっと観察している。