身ごもり政略結婚

父に政略結婚の話が漏れるのが嫌で、学生時代からの友人にも相談できなかった。

これまで散々恋バナをしていた一番の親友、田淵真紀(たぶちまき)にも結局ひと言も耳に入れていない。


完全にひとりで決めなくてはならなかったので、正直これで正しいのか自信がない。

でも、昼間の父の笑顔を思い出すと、正しいとか正しくないとかではなく、こうするしかないと覚悟を決めた。


須藤さんに会ったのは、その週末の日曜日。
十五時で店番を春川さんにバトンタッチして、彼に会いに行った。

父に須藤さんと会うという話をしたら、「うまくいってるんだな」とうれしそうで、胸がチクリと痛む。

うまくいっているわけじゃない。断れないだけなのに。


待ち合わせの時間に外で待っていると、彼は自分でクーペタイプの黒いBMWを運転して現れた。

今日もスーツ姿なのは仕事をしていたからだろうか。


「こんにちは」


挨拶をする彼は、私をじっと観察している。
< 40 / 322 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop