身ごもり政略結婚
「来月、店を閉める予定です」
実は千歳の経営が傾き、どうにもならないところまで来ている。
私は短大に通いながら全国の和菓子の種類や作成方法についても学び、今では和菓子のデザインを考えることもよくあるが、父のような技術を身に着けるまでにはまったく至らず。
それでも売り子として店を切り盛りしていたものの、半年ほど前に父がかわいがっていた弟子が店にあった売上金をすべて盗んで姿をくらましてしまった。
その日店にあったのは、とある政治家から依頼された和菓子の箱詰め代金、約百万。
その政治家はいつも現金一括払いで、秘書が支払いに来る。
それを弟子も知っていての犯行だった。
いくら腕を認められた父とはいえ、チェーン展開をしているわけでもなく、店はただ一軒。
創業百二十年という歴史があるにも関わらず、父と弟子がふたり、そして私だけで回していた店は、もともと大繁盛というわけでもなかった。