身ごもり政略結婚

麻井さんはそれだけ言い残すと、すぐに帰っていった。

鉄仮面って? 
過去になにかあって、本心を表さなくなったということ?

そんなことを考えながら、私は再びアイスの入った袋をのぞく。


「忙しいのに」


麻井さんに頼まなければならないほど身動きが取れないだろうに、私のことを気にしてくれていたんだ。

大雅さんが、妊娠したことを本当はどう思っているのかと不安だったが、きっと喜んでくれているよね。


「アイス、食べよ」


まだ食欲は湧かなかったけれど、大雅さんの厚意を無駄にしたくない。

ゆっくりだったけれど、アイスは無事にお腹に収まった。


先生が『精神的なものもあるから、つわりにも波があるかもね』と言っていたが、その通りかも。

一日の中でもひどい時間と、比較的楽な時間がある。
楽な時間に少しずつ食べて、体力を温存しなくては。

妊娠出産なんて初めての経験で、いちから勉強しなくてはならない。
< 90 / 322 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop