身ごもり政略結婚

出迎えに行かなくてはと思ったときにはもうベッドルームのドアが開いた。


「おかえりなさい。寝たままですみません」
「気にしないで。横になって」


彼は座った私をまた布団の中に促して、自分はベッドに座った。


「麻井さんが来てくださいました。アイス、ありがとうございます」
「食べられたか?」
「はい、ひとつ全部」


そう伝えると、彼は頬を緩ませる。


「よかった。他に食えそうなものがあればなんでも言って。会社で出産経験のある女子社員に聞いたら、果物とか炭酸水とかがよかったって言ってたけど」


わざわざ聞いてくれたんだ。

よかった。
彼はやはりこの子がやってきたことを喜んでいる。

麻井さんが言っていたように、感情を出さないからわかりにくいだけなんだ。


「果物は食べたいです。水分が多いもの」
「わかった。明日用意する」


まだ遠慮があって、食べたいものをお願いするのにもちょっと勇気がいる。

でも、私の髪を撫でながら優しく微笑む彼を見ていると、甘えてみてよかったと感じた。
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