ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
私もつられて微笑みながら、「いえ」と首を振った。
「私はただ打診しただけですから」
「でもっ矢倉さんて、すごい売れっ子でしょう。こんなギリギリで、しかも代打を引き受けてくださるなんて、真杉さんの口利きのおかげですよ。さすがですね」
単にスケジュールが空いてたから、ってだけだと思うけど……
と曖昧に笑いながら、視線を店の奥、パシャパシャっとシャッター音が響く方へと移した。
トワズは、比較的歴史の浅いジュエリーブランドなんだけど。
ドラマや雑誌とのタイアップで人気に火が付き、あっという間にOLたちのマストアイテムとして認知されるようになったのよね。
今日、新宿店の休業日に私がここへお邪魔している理由は、お仕事だ。
店内では今、広告掲載用の店舗写真の撮影が行われている。
春らしく、淡いパステルカラーでデコレーションされた店内は、宝飾店っていうよりパティスリーみたい。足を踏み入れただけで、わくわくするような、華やいだ仕上がりで。
雅樹も大いに刺激されたらしく、さっきから楽しそうにあちこち、カメラを向けている。
もともとは別のカメラマンにお願いしていたんだけど、直前になってその人がまさかの急病。
急遽代わりの人を探さなくちゃいけなくて焦ったけど……雅樹が空いててほんとにラッキーだった。
「すみません、確認していただけますか」
雅樹の声がして。
待ってましたとばかり、慎重に巻いたらしい茶髪を揺らして駆け寄っていくのは、トワズ広報部の長谷部瑞穂(はせべみずほ)さん。
私と佐伯さんもそれに続き、接客スペースに置かれたパソコンを覗き込んだ。