ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
「矢倉さんがこんなに素敵な方だなんて知らなかったから。次もぜひ、お願いしたいな。うち、結構カメラの仕事、多いんですよ」
媚びるような眼差しはかなりロコツ。
でも仕事絡みでは強く拒否もできず、彼も「はぁ……」なんて、困惑気味だ。
「ええと……でも御社は、専属で頼まれてる方、いますよね?」
助け舟を出すつもりで口をはさんでみたけど、ふんと鼻で一蹴されてしまった。
「高林さんねー。もうずっと同じ人だし、そろそろ変えてもいいんじゃないかって、わたしなら上に言えますから」
「いえいえ、勘弁してください」
雅樹が戸惑いながら首を振る。
「あんな大御所の仕事盗ったなんて噂が広まったら、この業界で仕事していけなくなるんで」
「あら、たかだかカメラマン一人、怖がる必要ないですよぉ。うちのブランドはこれからもっと伸びますから」
あなたが相手にしたがってるのも、“たかだか一人のカメラマン”ですけど?
雅樹の方を見ると、同じことを考えていたらしい。
私たちはチラッと視線を合わせ、肩をすくめた。
そこへ。
「ここだけの話、近々爆発的な人気が出る予定なんです、トワズが」
バサッと音がしそうなほど濃いまつげを上下させた彼女が、思わせぶりに微笑んで見せた。
何かを話したがってることは、一目瞭然だな。