ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
不本意だけれど……
これで話題が変わってくれるならと、彼女の誘いに乗ってやることにした。
「今でも十分人気あると思いますけど……近々、何か特別なことでもあるんですか?」
途端。
長谷部さんは大げさに(そして嬉しそうに)身をくねらせる。
「えっそんな、言ったらいけないって、え、でも……どうしようかなぁ、えー……」
言いたいんでしょ、さっさと言えば?
邪険に催促したくなるのをぐっとこらえて、「ぜひ教えてください」と笑顔でねだってみる。
案の定、彼女は喜色満面で「実はぁ」と、切り出した。
「今噂の御曹司が、うちでエンゲージリングをお求めになったんですっ!」
「「………は?」」
エンゲージリング……?
雅樹が私を見る。
私は力なく首を左右に動かし……知らないってことを伝えた。
そう、知らない。
私は何も、もらってない。
「お二人ともご存知ですよね。今をトキメク御曹司、といえばリーズグループの、ライアン・リーっ。少し前に、うちでオーダーメイドのリングを作られて。だからわたし、知ってるんですよぉ、彼の本命が誰なのかっ!」
「へえ……それで、誰なんですか。彼の本命って」
雅樹の言葉にかぶせるように、勢い込んだ声が響いた。
「イライザ・バトンですよっ!」