ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
「っ……!」
くらっと後ろへ傾いた体を、雅樹が支えてくれた。
私の様子に気づかないまま、長谷部さんは頬に手を当てて、うっとりと続ける。
「エンゲージリングにって、デザイン依頼から承ったんです。サファイアとダイヤを使った、……ちょっとシンプルすぎるような気もするけど、でもすっごく素敵なリングで」
もう何を聞いても驚かない、これ以下の状況はないと思ってたけど。
……まだ、あったらしい。
「長谷部さん、お客様の情報を漏らしちゃダメですよ」
アクセサリー用のトレーを手にした佐伯さんが、怒った様に眉間にしわをよせて立っていた。
「あら、いいじゃない。婚約発表であのリングが映れば、どうせすぐにバレるんだから」
「イライザさんのリングかどうか、わからないじゃないですか」
「彼女以外考えられないわよ。サファイアよ? あの青い瞳に合わせて作ったに決まってるわ」
「すみません、ちょっと彼女、座らせてやっていいですか」
雅樹の声とともに、ぐいっと腕を引かれて……ソファに腰を下ろす。
「大丈夫か、飛鳥?」
……間一髪、だった。
どっと身体が重たく感じて、ぐらぐらと眩暈がする。
頭、痛い……
「やだ、真杉さんっ。お顔が真っ青……」
「大丈夫、です。ちょっと貧血気味で」
佐伯さんに大丈夫だと頷き、構わず撮影を始めてくれるようお願いした。