ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
無事に予定のアイテムすべてを撮り終わり、佐伯さんと長谷部さんが打ち合わせのために離れて行くと、全身からすべての力が抜けた。
誰も見てないから……いいかなと、少し行儀悪くソファの背に寄り掛かる。
「大丈夫か」
膝をつき、機材をバラしてカバンにしまっていた雅樹が、私へと視線を上げた。
「うん。ごめんね、後半ほとんど座りっぱなしで」
「いや、悪阻ってつらいんだろ? 無理するな」
「ううん、普段はそんなにひどくなくて、割と平気なんだけど。今日はちょっと……」
言葉を濁すと、彼が手を止め、眉をひそめた。
「なぁ、聞かない方がいいのかと思ってたんだけど……お前ら、どうなってるんだ? うまくいったんじゃなかったのか?」
私だって、そう思ってたわよ。
責めるような口調になってしまいそうで、ぐっと口を噤んだ。そして。
苛立ちを紛らわせたくて、わざと軽い口調で「雅樹はさ」って聞いてみた。
「ミユキちゃんから『あれ買って』とかおねだりされたら、嬉しい? 可愛いなって思う?」
「はぁ?」って面食らったように振り返る雅樹。
彼の表情の変化はわかりづらいけど……私にはわかる。彼は今、テレている。
「あ、あぁ……まぁ、そうだな。状況にもよるが、甘えられるのは……嬉しいかも……って、何を言わせたいんだよお前はっ」
「私、可愛くなかったかな」
淋し気な自分の声に、胸がじく……と疼いた。