ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
“打丹得琉”のところだけに二重線が引かれてるところをみると、それぞれ独立した単語なのかもしれない。
「じょ、みなみ……さん? あ、まん……あぁ、そういうことか!」
2つ目のところで、閃いた。
これ、人名だ。アマンダ。
となると、他のも……そうよね。
「もしかして、ジョ、ナ、サン? えーと、ダ、ダ……ニエルだ!」
暗号を解読した探偵みたいに、得意げな声が出てしまい、ぷぷって吹き出しちゃった。
そういえば彼、自分で漢字オタクだって言ってたっけ。
きっとこれって、赤ちゃんの名前候補だ。
何もこんな無理やり、漢字を当てなくてもいいのに。
「パパにキミの名前任せちゃって、よかったかなぁ」
お腹を撫でながら、くすくす笑ってしまう。
でも、それだけ赤ちゃんのこと楽しみにしてくれてるってことよね。
コースターを額に押し当て、ホッと深呼吸した――……刹那。
ふわりと、嗅覚が何かを嗅ぎ当てた。
記憶の底に覚えのある、何か……
途端。
身体の奥に、ドロリと汚泥のような気味の悪いものが渦巻く感覚。
それがあっという間に喉元まで、せりあがってきた。
「っぅ……ぷ」
バッと手で口元を覆い、トイレに駆け込んだ。