ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
司会者の質問によどみなく日本語で答えていくシンシアを遠目に見ながら、壁に寄り掛かり、深呼吸した。
圧倒されてる場合じゃない。
早く、探さなくちゃ……
「大丈夫かい? 気分でも悪いの?」
ふいに間近で声がして、ビクッと振り返った。
出席者の一人だろう。上品な中年男性が、ワイングラスを片手に心配そうにこっちを見てる。
「いっいえ、お気遣いなく」
自分の立場を思い出した私は、慌てて笑顔を貼り付け、首を振る。
そうだ。今の私は、ホテルスタッフ。
ぼうっとしてたら変に思われる。
「ええと……よろしければ、新しいものをお持ちしましょうか?」
「ありがとう。でも大丈夫だよ、飲みすぎるなと秘書にうるさく言われていてね」
「では、あの、空いたグラスを……」
「そう? 悪いね、じゃあ頼むよ」
にこやかに手を伸ばした紳士から、グラスを受け取る。
手首のカフスにキラッとダイヤが光っているのが見えて、ギョッとした。
ゴージャスだな……
そう思って辺りを見回すと、この人だけじゃない。
どの人の装いも、みんな上質でおしゃれ。
ファンミーティング、といってもアイドルのそれとはずいぶん違って、年齢層は高めで。
男性の方が多いし、財界の懇親会とでも言った方がふさわしい雰囲気だ。