ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
どきんどきんどきん……
大きく鳴る心臓をなだめながら、
少しだけ位置を移動すると、その姿がはっきりと見えた。
今夜の彼は、ジャケットもシャツもズボンも、ストイックな黒一色。
ネクタイだけがシルバーで……
シンシアの衣装に合わせたんだなって、一目瞭然だ。
周りの人たちに壇上へ上がるよう促されてるらしい。
困った様に苦笑いしながら首を振ってる。
「彼、照れてるんです。あんな派手な顔してますけど、結構シャイなの。可愛いでしょ?」
司会者は笑いながら、会場を見渡す。
「がっかりしてらっしゃる男性ファンの顔が、ここからたくさん見えますが?」
「ごめんなさい」と、シンシアがしおらしく両手を合わせた。
「優しい皆さんなら、温かく見守ってくれると信じています。彼はわたしが、子どもの頃から好きだった人だから」
「というと、お二人は幼馴染ということですか」
「そうなんです。兄妹みたいに子ども時代を過ごして。一旦離れ離れになったんですけど、ハイスクールのサマーキャンプで偶然再会したの」
「運命の再会、ということですね?」
「その通りです。だからこの想いは、絶対に変わらないって自信あるんです。たとえ彼が、犯罪者だったとしてもね」
際どいジョークに、その場がどっと沸いた。
「おめでとう!」
「お幸せに!」
あちこちから響く声に応えて、シンシアはひらひらと嬉しそうに手を振る。