ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

「あ、大河原部長! および立てして申し訳ありません」

混雑した会場内で、首尾よくその人を捕まえられるか、ほぼ賭けだったけど。
よかった! ライアンはうまく見つけてくれたみたい。

小さくガッツポーズしてから、頭を下げた。

「真杉さん。何かな、リー専務から重要な話があるって聞いたんだが……」

積みあがった段ボールを避けつつ、バックヤードの狭い廊下をやってくる大河原さん。
その足取りは、少し疲れているように見えた。
清水女史から逃げ回っていたせいかもしれない。

「ええ、実はそうなんです。ぜひ会っていただきたい方がいて」

言いながら、そそくさとドアを開けた。
そこは、私たちがさっきまで話をしていたミーティングルームだ。

「……まさか、女性じゃないだろうね?」

ドアの手前。
憮然とした顔で、大河原さんが足を止めた。

「樋口から何を吹き込まれたか知らないが、私には恋愛も結婚も必要ない。真杉さん、君には十分伝わってると思っていたが、残念だよ」

まままずい。思いっきり不機嫌モードだ。
ええと……
ええと……どうしよう……

そして焦った私は、何をとち狂ったか――とんでもないことをやらかした。

「ご、ごめんなさいっ!」

ドンっ!
大河原さんの背中を、思いっきり両手で押したのだ。

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