ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
ぐわんって室内に響き渡る声。
ドアにしがみついて、ひっくり返りそうになる体を必死で支えた。
えぇー……大河原さん……
「妊娠したらどうするのって聞いたら、あなた言ったでしょ。『その方がいい』って!」
まさか、彼みたいな堅物っぽい人にそんな野獣な歴史があったなんて……
「あぁ……あれか、言ったな……確かに」
思い当たるところがあったらしい大河原さんが、動揺を隠すように白髪まじりの髪をぐしゃぐしゃと激しくかき回した。
「ほら、やっぱり子どもが欲しかったんでしょ。だから私は――」
「自信が、なかったから」
「え?」
「君は、大学時代からみんなの人気者で、すごくモテて……だから、わからなかった。どうして君がこんな根暗な研究バカと、つきあってくれる気になったのか。どうしたら君の気持ちを、ずっと繋ぎとめておけるのか、いつも自信がなくて」
今や、そこに地獄のオニガワラ、なんて威厳はカケラもなくて。
彼はまるで悪戯がバレた少年みたいに肩を落とし、目を泳がせている。
「でも……子どもができたら、もしかしたら、しぶしぶでも仕方なくでも、君は俺とずっと一緒にいてくれるんじゃないかって……離れていかないんじゃないかって、思って。それでその……」
も、もしかして、それが……避妊しなかった理由?
つまりそれって……
「バッカじゃないの!?」