ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
腰に手を当て、眦を吊り上げて。
柴田さんが心底呆れかえった、というような視線を大河原さんに投げる。
「ああああっもうっ! こんなバカのことずっと忘れられなくて、あんなに悩んで、この年まで一人とかっ! なんか自分が情けないわっっ!!」
「……え、……香菜? 今、なんて?」
「えっ? あ――」
言葉を失って見つめ合う2人の周り。
室温が、わずかに上がった気がした。
う、わぁ……
なんだか、リアルに恋愛ドラマを観てる気分だ。
こっちの方がドキドキしちゃう。
一人ドアの陰で興奮する私の声が届いた、わけはないと思うけど。
大河原さんの手が、細い手を掴んだ。
引き抜こうと試みながら、柴田さんは躊躇いがちに首を振る。
「つ、司、結婚したんでしょ、教授の娘さんと。だから……」
低い笑い声が響いた。
「誰の情報だよそれは。大昔に見合いはしたけど」
「え、お見合い……だけ?」
「あぁ会うだけでいいって言うから、会っただけ。だいたい、教授の娘婿だったら大学に残ってる。会社勤めなんてやってない」