ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

「この位置で間違いありませんか?」

駐車場の隅、植え込みを指して僕が聞くと、その女性はこくこく、と顔を真っ赤にして頷いた。

「そうですっ! うちの子が、その下から見つけてきて……そのうち戻ってくるのかと思ったんですけど、お財布も入ってるし、なんか変だなって」

落ち着け。
落ち着け。

手のひらにジワリとにじむ汗を感じながら、必死に自分へ言い聞かせる。

けれど、どう言いつくろっても、楽観的な予想は難しい状況がそこにあった。


飛鳥の携帯に出た相手、それはこのイベントの運営事務局のスタッフだった。
彼は、この携帯が落とし物として今届いたばかりのカバンの中に入っていたと僕へ告げた。

ラッキーなことに、事務局に拾い主の女性はまだいて、拾った時の状況を直接聞くことができた。

見つけたのは、彼女の息子。
ここ――駐車場の一角の植え込みから、それを引っ張り出してきたのだという。


中には、携帯や財布、母子手帳までそっくり入ったまま。
そんな大切なものを、“置き忘れる”わけがない。

しかも、カバンは植え込みの下、大人の目線では簡単に見つけられない場所へ、押し込んであったそうだ。

この状況は、どう考えても……

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