ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
彼は、私がここにいることに全く驚いてないみたい。
無表情のままこっちを一瞥して、最上へと向き直る。
「遅くなりました」
最上は彼の背後を確認し、不満げに鼻を鳴らした。
「おい医者はどうした。連れてくるはずだっただろう」
ニセ秘書は、落ち着いた様子で「申し訳ありません」と目を伏せる。
「予定していた者が、患者に訴えられて行方をくらましまして」
「はぁっ?」
「ご心配なく。今代わりを手配しておりますので。1時間ほどで到着するかと」
「なんだ、それを早く言え」
「で、場所や器具は……」
「あぁ問題ない。隣だ。石塚に手配させた」
最上が視線を向けたのは、私の背後。
振り返ると、そこに小さめのドアがある。
この向こうに、何があるって……?
なぜかわけのわからない寒気に襲われて。
両手で腕をゴシゴシこすった。
シンシアが楽しげに笑いながら、最上の隣へ腰かけて足を組む。
「わかったでしょ。お金を受け取ろうがどうしようが、結果は変わらないのよ。できれば自分から手術台に乗ってほしかったけどね」
「なっ……」
しゅ、手術……?
全身から凄まじい勢いで血の気が引き、呼吸が乱れていく。
もしかして、このままここで、赤ちゃんをどうにかしようって言う気なんだろうか、こいつらは。
そんなことまでするなんて……
「何考えてるのよ……信じられない……」