ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

「まだ同意してないんですか?」

ニセ秘書の訝し気な視線が注がれ、私は力いっぱい首を振った。

「絶対っ同意なんてしませんから! 何億積まれたって嫌よっ!」

「医者が到着してから騒がれても困りますね。クスリでおとなしくしててもらいましょうか」

く、くすり!?

「用意してこよう」
石塚が言い、部屋を出ていく。


ダメ……そんなの、絶対ダメだ。

逃げなくちゃ。
逃げなくちゃ。

早く、逃げなくちゃ。

赤ちゃんが、殺されてしまう!
私たちの、大事な赤ちゃん!

もうちっちゃな手と足が、バタバタ動いてて。
一生懸命生きようとしてて。

愛しい愛しい命……


エコー写真を脳裏に浮かべながら、がくがくと震える足で必死にソファの後ろへ回る。

じきに、背中が壁にぶつかった。

どこまでも固く冷たく私を拒絶する壁に、絶望感が押し寄せる。
こみ上げる嗚咽に、視界がぼやけていく。

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