ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
でも彼には妻が……最上悦子は、それを知ってるの?
これは……どういうこと?
くすくす……
シンシアの黒髪が蛇のようにうねって、私の思考を邪魔した。
「子どもは、作ってないわよ。一人で十分よね。時間もかかるし、面倒だけど」
お腹にアトが残らないように、スペシャルエステを予約しなくっちゃ。
平然と嘯く彼女が、私にはどうしても人間には見えなかった。
嫌悪と吐き気で、意識が飛びそうだ――
「あなたに……あなたなんかに、母親になる資格はないっ」
思わず叫ぶと。
「……資格がない?」
シンシアの口調が、ぐっと胡乱なものへ変わって。
「そんな親、世界中にあふれてるでしょうに」
その眼差しに、一瞬、底知れない憎しみが閃いたように見えた。
「わたしなんか、生みの親にマフィアへ売り飛ばされたわ。平和ボケした国じゃさすがに人身売買はないだろうけど、虐待くらいなら珍しくないでしょ? それが現実ってものなのよ」