ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
あっという間に、いくつもの懐中電灯やサーチライトで、あたりは昼間のような明るさに包まれた。
逆光になってよく見えないけど、その向こうに大勢の男たちが行きかってるのがわかる。
何人くらいいるのか、数えるのも億劫なくらい。
こんなにたくさんいたんだ、とどこか他人事みたいに考えていると。
「ったく、あんたたちがだらしないから、面倒なことになるのよっ」
激怒するシンシアの声がした。
落とした視界に、黒いエナメルのつま先が映り――顔を上げた途端。
パシッと乾いた音、そして頬に灼けるような痛みが走った。
ぶたれたのだと気づく前に、彼女は最上によって引き離されていた。
「バカじゃないの! 金もらっとけばいいじゃないのっ! 子どもなんて、また作ればいいでしょっ! なんでこんな無駄なことばっかりするのよっ!!」
癇癪を起した子どものような彼女を見て、
初めて私は、この人を可哀そうだと思った。
生い立ちについてじゃない。
二胡の才能や容姿、新しい家族……
神様はちゃんと彼女に、たくさんの可能性を用意してくれているのに。
でも彼女は、その幸運に気づいていない。
そして、とても孤独に見える。
彼女を本気で愛してくれる人は、いなかったのかな……