ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

「ほら、あーん」

やっぱりそれか!

「い、いやよ、無理。やらないわよっ」

食べるなら自分で、って手を伸ばすんだけど。
すっとフォークが遠ざけられてしまう。

「なんで嫌なの?」
「なな、なんでって……そんな、恥ずかしいしっ」
「今日は君の誕生日なんだよ? 甘えてくれてもいいだろ?」

うぅ。
そんな捨てられた子犬みたいな目で、こっち見ないで。
私が悪いことしてるみたいじゃない。

「今日だけ特別だよ。ほら、ベビーも食べたいって。胎教胎教。はい、あーん」

胎教って、やっぱり違うと思うけど……と思いつつ。
引き下がらない彼に負けて、しぶしぶ口を開いた。

フォークの先のそれへパクっと食いつく。
途端。
メープルシロップの甘みがじゅわって広がって、自然と顔が綻んだ。

「どう? おいしい?」
「ん、すごくおいしい」

もぐもぐしながら素直に言うと、相好を崩した彼が次の一切れをくれて。
流されるように、朝ごはんタイムとなった。


「最初、シロップで33歳おめでとうって書こうとしたんだけど、うまくできなくてさ。チョコにすればよかったかな」
「か、書かないでよそんなことっ。30越したら、数えなくていいのっ」

ムキになって頬を膨らませる私に、ライアンが吹き出した。

< 296 / 394 >

この作品をシェア

pagetop