ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
<……今どこにいるんだ、キング?>
僕と入れ違いで、シンガポールから出国した……というより逃げ出した、SDのトップを恨めしい声で呼んだ。
《マカオ》
そっけないセリフの向こうで、またジャラジャラジャラ……と金属のぶつかる音が続く。
こっちが睡眠削って仕事してる時に、カジノで豪遊か。結構なことだ。
<一体君はいつこっちに戻ってくるんだ?>
《さぁな。パソコン繋いでやることはやってるし、別に構わんだろ》
ムッと口元が歪んだ。
理由の想像はつく。僕に会いたくないから。
昔からそう――彼は、僕が嫌いなのだ。
<あのさ、僕が総帥代理を務めることに文句があるなら、君がやればいいだろう。そもそも君の方が適任なのに>
彼はもうずっと、総帥の片腕としてリーズコーポレーションで働いてきた。
積み上げてきた実績も経験も、申し分ない。
実際、取締役の何人かは、僕より彼を推しているんだから。
《そうだろう。だから逃げてやったのさ》
くくっと楽しそうな笑いを漏らして嘯く男に、何か言ってやろうとして……ふと口を噤んだ。
もしかして彼は、そういう意見がでることを見越して、シンガポールから出たんだろうか。僕に、総帥代理を譲るために? いや、まさか――
《つまらん意地を張るな。このまま総帥を継げばいい。お前だって興味はあっただろうが》