ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
<は? そんなこと考えたことも――>
《なかった、とは言わせない。賭けてもいい。あったはずだ。自分がトップだったら、と思ったことが》
断言するような口調にイラつきながらも、僕は……反論できなかった。
確かに、その通りだったから。
特に去年の夏、SDを辞めてグループとのかかわりを断って。
この巨大な組織を外側から眺めるようになった頃から、時々考えていたように思う。
世界中に張り巡らされたそのネットワーク、各界に跨る影響力、その可能性を、自分ならどう生かすだろうか、なんてことを。
飛鳥の影響もあるかもしれない。
彼女は、人の特性を見抜き、適材適所を見極めるのがとてもうまい。
飛鳥マジックは、その典型例だろう。
彼女のような視点からリーズグループを俯瞰したら、どうだろうか。
新しい人材、新しい戦力を、ふさわしい場所へ、事業へ。
より開かれた経営へ――自分だったら、と。
けど……
《引っかかってるのは、女のことか》
ご婦人方に「腰が砕けるのよね、あれ聞くと」と評される独特の声音が、僕の意識を車内へ戻した。
<え?>
《日本に残してきた女が、気になって仕方ない?》