ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

<それは……>

《何を悩むことがある。掻っ攫ってきて、総帥夫人にすればいい》

<総帥、夫人……?>

《侑吾が女を褒めるのを初めて聞いたぞ。お前が惚れたのも納得の、見上げた女だと。十分、ふさわしいんじゃないのか。総帥の妻として》

僕が日本に戻るのではなく、飛鳥をシンガポールに……
確かにそれができればと、この2カ月の間、考えたこともある。

ただ日本には、彼女のすべてがある。
積み重ねてきたキャリアや人脈、友達、家族……
彼女が、どれほど自分の仕事に誇りをもって打ち込んでいるか、僕はよく知っているし。
すべてを捨てて、ついてきてほしいなんて――

僕の沈黙を、キングは別の意味に解釈したらしい。


《取引きしろ》

<は? 取引き?>
唐突な提案に、戸惑った。

《総帥に反対されるのが怖いんだろう? あの人は、自分が決めた女をお前にあてがいたいだろうしな》

それは……実際、その通りだ。
反対されることは、ほぼ間違いない。

総帥は、僕を後継にと発表した席で、同時に幹部たちへくぎを刺したらしい。

――彼には、わしが最高の結婚相手を用意する。間違っても、自分の娘や親族を紹介しようなどと考えないように。

《だから取引きするんだよ。跡を継いでやるから、結婚は自分が選んだ女とさせろって強気に出ればいい》

どうやら彼は、本気で僕を総帥にするべく、アドバイスしてくれているらしい。
しばらく会わない間に、彼に何が起こったんだろう?
世にも珍しい事態に、困惑しながら耳を傾ける。


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