ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

<わしのことはいいから、早々に彼女を連れてきなさい>

妊婦の移動になるから、慎重に。
わしの専用機を使うといい。あれももう、お前のものだから。
シンガポールの医療水準も日本には負けない、出産には最高の環境を整えてやろう。専門の医療チームを組ませて……

自分のことはそっちのけで、どんどん話を進めてしまう強引さに呆れながらも。
それでもわずかに、高揚している自分を認めないわけにはいかなかった。


飛鳥に……頼んでみようか。
一緒にシンガポールに来てくれと。

もちろん、彼女の返事次第だけど。

彼女が傍にいてくれたら。
きっとできる気がする。
誰も見たことのない景色を、一緒に見られる気がする――


身体を巡る、武者震いのようなものを抑えるようにこぶしを握りしめながら、
そろそろ退出しようかと考え……
僕はふと、総帥へ視線を戻した。

最後にどうしても、聞いておきたいことがあったからだ。


<一つだけ、教えていただけませんか? なぜあなたは、黄を殺さねばならなかったんです?>



突き出た喉ぼとけが、大きく隆起するのが見えた。



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