ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
総帥は再び危険な状態となった。
面会謝絶が続き、僕はあの問いの答えをなかなか聞くことはできなかった。
総帥不在ではあったが、すでにその意志は周囲に通達済みであったため、様々なことが滞りなく粛々と進められた。
僕の総帥就任がグループ全体へ内々に通達され、正式発表の段取り、その後の各国財界人との会談予定なども次々とまとまっていき――
ようやく面会が叶って話を聞くことができたのは、2週間後。
就任発表会見を翌日に控えた日のことだった。
<さぁこれでよし。明日は朝から大忙しですわ>
会見の最終チェックを終え、満足げに言うマリアへ。
椅子から立ち上がって、デスク越しに手を差し出す。
<君がいなかったら、ここまでスムーズにできなかった。ほんとにありがとう。これからもよろしく>
<まぁ光栄ですわ、こちらこそ>
嬉しそうに言い、僕の手を握り返したマリアだったけれど。
ふと、その表情を曇らせた。
<あの……どうかなさったんですか?>
<え?>
<ご心配事でも? なんだか様子が変ですわ、昼間病院から戻られて……それからずっと>
優秀な秘書を持ったことを、この時ばかりは少し煩わしく感じながら、首を振って手を放した。