ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
<疲れてるんだな。ずっと緊張しっぱなしだったから。今日は早く寝るよ>
<ぜひ、そうなさってください>
<君も早く帰って休んで>
<あら、私はこれからエステなんです>
スペシャルコースを予約したんです、と声を弾ませるマリアを笑顔で見送って……椅子に崩れ落ちた。
明日は、朝から大忙し……
もう引き返せない。
そう思うと、執務室がまるで豪奢な鳥かごのように見えてきた。
僕はもう、ここから逃げることはできないんじゃないか。
飛鳥に二度と会えないんじゃないか……
そんな恐怖にも似た感情に襲われた。
――生まれて初めての、恋だった。
――青い瞳の、美しい娘。
「Damnっ……!」
脳裏にこびりついた言葉を振り落とすように、デスク上の携帯を手荒く掴む。
アドレスを指で辿り、そして……通話ボタンをタップした。
『はい』