ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

「久しぶりに声を聞けて嬉しいよ、拓巳」
『ほおお、てっきりオレのことなんか忘れてるかと思ったけどな』

揶揄うような気安い口調に、頬が緩んだ。

「ごめんごめん、いろいろ……大変でさ」
『知ってる。こっちでも散々報道されてるからな。イケメン新CEOのことは』

そうか……じゃあ、飛鳥ももう知ってるのか。

『うちは辞めるってことでいいんだな?』
「あ、……ごめん、連絡が遅くなってしまって」

未だ休職扱いにしてくれていたのかと、律儀な友人に驚きつつ謝った。

『まぁいいさ、お前は日本に収まるような奴じゃないと思ってたから。一応辞表は送ってくれ。日本語のテンプレート、メールしとくから』
「ん、ありがとう」
『で? 飛鳥さんとは、今後のことどう話し合ったんだ? 出産はどっちで? シンガポールでもいいだろうけど、やっぱり言葉とか……』
「あ……実はまだ、連絡してなくて」

『は……ぁああああ!?』

鼓膜を破りそうな素っ頓狂な叫び声に、反射的に携帯を耳から遠ざけた。

『おまっ……何やってんだよ! 彼女、口には出さないけどめちゃくちゃ心配しててっ――』

「拓巳」
『なんだよっ!?』


「……迷ってるんだ。飛鳥との結婚」


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