ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
赤信号で、車が停まり。
運転席に座るその人は、シートベルトが許すギリギリまで、私へ体を向けた。
「手の届かない幸せを待ち続けるのはやめて、僕にしませんか」
「何の、冗談――」
何を言われたのか分からずスルーしようとして……口をつぐんだ。
まっすぐ注がれる眼差しが、全然笑ってなかったから。
「冗談なんかで、総帥の想い人を口説けるわけないでしょう。下手すれば命がけだ。本気ですよ。本気であなたに惹かれてる。無謀にもたった一人で最上たちに立ち向かう、あなたを見た時からね」
「でっでもあれは……結局、無駄だったっていうか……」
後から聞いた話だと、霧島さんは私を薬で眠らせてから、こっそり助け出すつもりだったらしい。
つまり、私はただ騒ぎを大きくしてしまっただけ、ってことで。
「早々に大掃除することができたのは、あなたのおかげです。初めてなんですよ。こんなにも、もっと知りたいと思う女性に出会ったのは」
その熱っぽい視線に気づいてしまった私は、どうしたらいいのかわからなくて。
ぎくしゃくと、膝に目を落とした。
なんだか、本気で告白されてるような気がするんだけど……
「すみません……私、――」
「ストップ」
彼の言葉が、私を封じた。
「今、すぐに断らないでください。僕はいつまでだって待ちますから」
「でも……」