ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
「僕も総帥と同様、確かに御曹司と呼ばれる立場ではありますが、気楽な三男坊でしてね。跡継ぎだのなんだの、面倒事とは関係ないんです。僕なら、ずっとあなたの傍にいられる。彼のように、あなたを不安にさせたりはしない。……子どもには、父親が必要でしょう?」
さらりと告げられた言葉に、情けないことに鼓動が乱れた。
子どもの、父親――
膝の上で両手を握り締めた。
ライアンはいつ、私と赤ちゃんを迎えに来てくれるんだろう?
そもそも、本当に来てくれるんだろうか?
王女様との結婚話を蹴って、私のところへ?
――これからのことはゆっくり考えるとして、とりあえず出産はこっちに戻ってしたら?
昨夜、お母さんとも電話で喧嘩したばかりだ。
――待ってるって、彼と約束したの。だから、東京で産む。
――まだそんなこと言ってるの? リーさんとは、縁がなかったと思って諦めなさい。赤ちゃんのためにも、早く現実を受け入れた方がいいわ。
最後まで聞かずに、強引に電話を切ったけど。
一人で……私はいつまで彼を、待っていられるだろうか……
信号が青に変わり、車列の波に乗って、車はゆるやかに動き出す。
霧島さんはもう、何も言わなかった。
窓の外を見るふりして、私が思い出していたのは、さっき見たワイドショーの画面。
輝くような笑みを浮かべて、インタビューに答えるライアンだった。