ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
語り終えた後。
ライアンは翡翠の瞳を上向けて、キリスト像を見つめた。
そして、神様の前でこんなことを言うのは間違ってるかもしれないけど、
と断ってから、切り出した。
「僕は今更、あの人の罪を暴き立てるつもりはないんだ。だって彼はもう、十分罰を受けてる」
うん、と私も頷いた。
その通りだと思ったから。
フレデリック・リー。
独裁者で暴君で……散々な噂をささやかれる気難しい人。
――不正は絶対にお許しになりませんし、ご親族の企業でも、容赦なく切るそうです。
――秘書さんから聞いた話ですと、ご趣味などもなくて、憑りつかれたみたいに仕事一筋、雑談すらしないんですって。
たった一人きりで、重い重い十字架を背負って来たんだろう。
「それに、おそらく……残された彼の時間は、そんなに長くない」
ライアンの膝の上。
拳が、白く骨が浮き上がるほど固く、握り締められていた。
彼にとって総帥は、やっぱり特別な人だったんだろうな。
「その時がきたらきっと……彼女が迎えに来てくれるんじゃない?」
天井付近に飛ぶ天使の彫刻を見上げながら言い、大きなその拳へ自分の手を重ねた。
「そうだね……そうだったらいいと思うよ」
彼の手が開き、縋り付くように指が絡み合う。
「だから、最初の飛鳥の質問に戻るけどね。全然反対はされてないんだ。引き裂かれる恋の辛さを知ってる人だから」