ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
「はい、一度だけ紹介してもらったことが。ナディア・トレヴィスさんですよね」
ゴージャスな赤毛のすごく綺麗な人で、ライアンとの仲を疑ったこともあるくらいなんだけど。
なんと彼女は、実は“彼”だそうで……
「トレヴィスさんと、お知り合いだったんですか」
「あー……知り合いというか……パートナー、だな。俺の」
「パートナー?」
意味を測りかねて顔を上げると、口元を片手で覆った部長が視線を逸らしていく。
その頬はほんのり染まっていて、え……照れてる!
部長が!
それは、彼の部下になって10年近くなるけど、初めて見る表情で。
思わず私も、叫びそうになる口を両手で押さえなくちゃならなかった。
つまりパートナーっていうのは……
「あ、の……」
「誰にも言うなよ。別に今更隠すつもりはないが、無駄に騒がれるのは好きじゃない」
「はっはいっ了解しましたっ」
こくこく頷いて。
そろそろとまた、目線を上げる。
「なんだ」
ぶっきらぼうな言葉の中に動揺が透けて見えて……なんだか可愛かった。
部長もこんな顔することあるんだな。
もちろん、そんなこと言えないけど。