ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

「愛してらっしゃるんですね」

ぽろっとこぼすと、「ゲホゴホっ……まぁその、なんだ……」とせき込みつつ意味不明の言葉をつぶやいていた部長。
でも諦めたように頷いて、小さく微笑んだ。

「まあ、お前の恋人には負けるけどな。あいつの溺愛レベルは、俺の知ってる中でも過去最強クラスだ」

「最強、ですか」

「あぁ間違いない」
力強い言葉に、心がほかほか温もってくる。

そうだ。
不安に思うことなんてない。

――君はさ、もうガラスの靴を履いてしまったんだ。
――返品は、受け付けてないんだよ。

私を追いかけてくれた彼。
諦めずに、想い続けてくれた彼。

――当たり前だろ。愛しくてたまらないよ。僕と君を繋いでくれた、愛のキューピッドでもあるからね。

その気持ちを疑うなんて、どうかしてた。
軽くなった足取りで、私は営業部のざわめきの中へ入って行った。


◇◇◇◇

翌日の土曜日。
私は敬心セントラル病院で妊婦健診を受けた。

「うん、いいね、順調だね。こっちが頭、これが手で、足ね。ほら、人間の姿らしくなってるでしょう」

担当の津田寛治(つだかんじ)先生のベテランらしい和やかな声を聞きながら、モニター画面に映る赤ちゃんの様子に、ホッとした。

ママがヘタレでも、ちゃんとたくましく育ってくれてるんだね。
ありがとう。ママも頑張るよ。

赤ちゃんに向かってそっと、話しかけた。
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