ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
パタパタと軽い足音。
伊藤くんと一緒に振り返ると、メイド服姿の小柄な女性が入ってくるところで――……「あっ!」って叫んじゃった。
「ご無沙汰しております、“マユミ”様、ではございませんね、飛鳥様」
丁寧に頭を下げてから目尻にくしゃっと皺をよせ、悪戯っぽく笑った彼女を、私は知っていた。
ライアンと初めて会った時、私を変身させてくれた魔女……もとい、ブティックの女性スタッフだ。
「その節は、大したご挨拶もせず、失礼いたしました。門脇麻里(かどわきまり)と申します。どうかマリーと、お呼びください。今後はこのお部屋の、つまり飛鳥様の専属のメイドを勤めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします」
メ、メイド?
「ブティックのスタッフじゃなかったんですか?」
「オープン当時からいるおばちゃんなんか、若い方も使いづらいんでしょうね。もう便利屋のようなものです。人員の足りないところを、端から端まで、たらい回しにされております」
そう言うと、おほほ……と口元に手を当てながら上品に笑う。
「さぁさ、お疲れでしょう? お風呂は沸いておりますよ。それとも先にお食事にされますか? すぐに運んでまいりますが」
いえ、と私は首を振る。
食欲は全くなかった。
昼食が遅かったせいもあるけど……何がなんだか、頭の中がぐちゃぐちゃだ。
いや、それより今は、伊藤くんともう少し話がしたい。一体どう聞けば答えてくれるだろう……