課長、恋しましょう!
会社から歩いて十分もないところ、ちょいと路地の隙間にある定食屋が、俺ン行きつけだ。

使い古された木製のテーブル。スポンジもとっくに潰れちまった丸椅子に腰かける。

「おやじ、いつものふたつ」

あいよ、と帰ってくるじぃさんの返事を聞きながら、俺は前を見た。

彼女が、ちょこんと縮こまって座ってる。

「あの……」

と上目遣い。

「さっき、ドアさっさと閉めちゃって、手ぇ挟んじゃってすみません」

「いんや、まあそんな気にせんでいいぞ。骨が折れたわけじゃあるまいし」

「……それから、奢ってもらっちゃうの、すみません」

「おいおい、なんか珍しくしおらしな? こっちの調子が狂うぞ」

普段なら「やだっ」とか「あらっ」とか言って肩を跳ねさせる彼女は、

「すみません」

「……」

なにやらやけに、テンションが低かった。本当に気が狂う。
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