課長、恋しましょう!
「あのよぅ」

と、さばにかぶりつき、飲み込んでから訊ねる。俺は頭から、まるまる食べる。

「今までなし崩しで今日まで来たけどよ、なんでお前、俺なんだ? いい男なら、さっきみてぇに結構いンだろうよ? お前顔はいいんだしよ。選べるだろ?」

「あらっ、課長はすっごく魅力的ですよ」

「いや、んなわけねぇだろ。今もたぶんデコはテカっとるわ、口は臭うわ、ついでに足もかいぃんだよ。こうして座ってっと、ベルトの上に一センチ、なぁんか乗っかっとるのも感じるしなぁ」

「課長~、それは課長が人間だからですよー。そういうですね、ああ人なんだなぁ、この人は生きてるんだなぁ、あったかそうだなぁってとこを教えられると、私なおさらメロっちゃいますよ」

「なんだそりゃ」

ちょいと異常な反応でないかい。

「課長は気付いてないんですよ。課長はすごぅく素敵なんです。あ、ほら、そうやってさばにガブって食らいつくの。とっても豪快で、見てるとドキドキしちゃいますよ?」

言われて、かぶりついた格好で固まる。

彼女はやっぱ変だな。なんか頬が赤いぞ、おい。さば食ってるとこに惚れられても、男としてなんとも言えんだろが。
< 16 / 28 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop