幼馴染は恋をする

「……朝」

「はい?」

「俺で良かったと思ってる?」

「え?どうしてですか?決まってます。柳内さんがいいです」

「…そうか。フ。直ぐ柳内さんに戻っちゃうな」

「すみません、何だか」

「別に、いいんだ。無理しなくて。……会ってないのか?連絡とか」

「貴浩君ですか?」

「…うん」

「会ってないです、連絡も。……自然にそうなっちゃった…」

「会いたいとか、話がしたいとか思わないのか?」

「そうですね。…会えば話はすると思います。そんな感じかな」

「そうなのか」

「はい。あ、このコンビニ、来たことにしてたんですよ?柳内さんの家に手紙を持って行った夜。……嘘つきですよね。必死でした。時間もちょっと、長くなったから。寒くなったからカイロを買いに来たって言って、売り切れてたから何店舗か行ったことにして、挙げ句、店内でコーヒーまで飲んで来たって言いました。
上手く誤魔化したつもりでしたけど、なんだかそうではなかったみたいでした」

「俺が引き止めたから叱られたの?」

「それはその時はなくて、あ、勿論、後で叱られたとかもないです。お母さんが」

「なんて?」

「確かに言うようにコーヒーの匂いは口からしてたけど、いい匂いがしたって」

「いい匂い?」

「……これです、この匂い」

「朝」

繋いでいた手を放して抱きついた。

「……あの日はこうして抱きしめられたから。その時、柳内さんの匂いが移ったんだと思います。
お母さんが鋭くてびっくりしました」

あっ。
腕を回された。

「…そうか、はぁ…迂闊だったな。ごめんな、我慢が利かなくて…。でも、そんなには付けてないぞ?」

私が何も、付けるような年齢ではなかったから。だから分かりやすかったんだと思う。

「大丈夫です、今となってはの話ですから」

「うん、……妙な噂が立たないうちに帰ろうか」

「え、あ、はい。フフフ、そうですね、これのことですよね」

「もういいんだけどな、ハハハ」

離れてまた手を繋いだ。
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